小さいモーターが廻る。だんだんと大きな牽引力《けんいんりょく》が起り、電力が発生し、やがて二つの硬球《こうきゅう》が双方から寄って来て、ぐるぐると回転をはじめる。するとこの箱がめりめりと壊れる。中から回転弾が、ぼうんと飛び出す。あとはめりめりもりもりと破壊が始まる」
「すげえもんだなあ」
「目的地にこの箱がつく時刻が分って居れば、この時限管《じげんかん》の適当なるものを壊しておいてから起動棒を抜くと、ちゃんと所定の時刻に回転を始める仕掛になって居る。目的地へこの箱のつくのは何時間後じゃな」
 博士は二人の特使の方をふりかえった。
「はい。目的地へつくのは、これから輸送機を呼んで、一時間後には当地を出発できますから、あとワシントンまで六千九百九十九キロを平均時速八百キロで飛んで、八時間と四十五分。飛行場から直ちに白堊館《はくあかん》まで自動車で搬《はこ》んで大統領に謁見するとしてその時間が十五分。合計|丁度《ちょうど》十時間。十時間です。博士」
「十時間、ああよろしい。正確に十時間後と調整して置こう」


     5


 ルーズベルトの両特使は、鬼の首をとった以上の悦《よろこ》び方で
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