やくかいてんだん》が条件にぴったり合っている」
「えっ、共軛回転弾。ああ、なんというすばらしい名称でしょう。大統領はどんなにおよろこびになることでしょうか」
「ええと、あれは第五十四号だったな」
 と、博士は大金庫の中から設計書類の一つを引張りだした。袋の口から中を覗いていたが、するりと抜きだした折畳んだ大きな紙。それを机の上に拡げる。
「あら、白紙《しらかみ》だわ」
 ルスが愕いた。
 博士は無頓着《むとんちゃく》に、その大きな紙の四隅をピンでとめた。それから机の下をさぐっていたが押し釦《ボタン》の一つをぷつんと押した。すると紙がぱっと蛍光色《けいこうしょく》を呈して光りだした。空白《くうはく》の紙上にはありありと図面が浮び上る。
「共軛回転弾というのは、こういう具合《ぐあい》に、二つの硬《かた》い球が、丁度《ちょうど》鎖《くさり》の環《わ》のように互いに九十度に結合して、猛烈な高速で回転するのだ。そして互いに相手を励磁《れいじ》して回転を促進し、永久に停まらない。この硬い球は、原子核の頗《すこぶ》る大きいものだと思えばよろしい、わしが五年かかって特製したものだ。硬いこと重いことに於
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