り行《ゆ》き逢《あ》ったわけだが、初めのうちはどっちもそれと気がつかない。それというのがチャーチルの特使は、不潔なモルフィネ中毒患者を装《よそお》って、よろよろ歩いていたし、一方ルーズベルトの特使の方は、男使《だんし》と女使《じょし》の二人組で街頭《がいとう》一品料理は如何でございと屋台《やたい》を引張って触れて歩いていたのである。
チャーチルの特使チーア卿《きょう》は機甲中佐《きこうちゅうさ》であった。ルーズベルトの女特使《おんなとくし》ルス嬢は、この間まで南太平洋の輸送機隊長をしていた航空大佐であり、その相棒たる男特使《おとことくし》ベラントはリード商会の若番頭の一人で、ちゃきちゃきの手腕を謳《うた》われている人物だった。
「よう。料理は何が出来るのかね」
チーア卿は、ろれつの廻らない舌で、ベラントとルス嬢の屋台に呼びかけた。
「お好みの料理を作りますぜ。殊に燻製《くんせい》料理にかけては、世界一でさあ」
ベラントはぬかりなく宣伝にかかる。
「世界一かね。じゃあ、それを作って貰おうか。早いところ頼むぜ。それからウィスキーにミルクだ。コーヒーはジャワのを。シェリー酒も出してくれ
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