の周囲のものを見廻して、防空壕に入れるべきものは何々ぞと考えると、どれもこれも大切――というよりも重宝なものばかりであるにはまごつく。
確かに防空壕に入れておいた筈のものが、いつの間にか、また手もとにずらりと並んでいるのには驚く。つまり、日々の生活のために必要だとあって、壕から取出して来て使い、そのままになってしまったものが、だんだんふえて来たわけである。さてこそ日用品というものは大切であり、重宝なわけ。万年筆一本、ナイフ一挺、メモ一冊なくなっても不便この上ないわけ。われわれの生活様式も一段と工夫を積まねばならぬ。
七月二十九日
◯昨日は岡東浩がえらくなったというので、招待してくれた。どうえらくなったのかわからぬが、とにかくうれしい話で、土産ともお祝ともつかずジャガイモの包をもって家を出かけた。玉川電車を渋谷で下りて、都電に乗ろうとして、渋谷から天現寺、四の橋行きはありますかと聞いたところ、今はやっていないとの事、なるほどそうであったかと、新橋行で行くことにする。くる電車もくる電車も素通りで、八、九回目にようやく乗れたが、一列に並んでいる人達何の苦情も言わず。心得がいいというか、
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