憤激は日に日につのるが、さてこっちは空へ手が届かず、まことに残念。地道ながら努力して戦力を盛りかえすしかない。
 ちなみに一家は茨城県太田へ移ったという話だが、この太田は日立よりやや北方、海岸ではないが海に近く、あまり安全とは申されない。しかしお互いさまに縁故先に適当なのがなく、それに差し当たり食糧が果してうまく手に入るかという問題があるので、危険でも何でも縁故へ落ちついて、まず食べられる安心を求めるのである。食はなにしろ皆が毎日のことだから大変な仕事であり、問題である。
◯昨夜B29、五十機ばかりが午後十時頃より京浜地区に侵入、主として川崎を爆撃した。折柄満月であったが、煙がだんだん高く天空にのぼり、せっかくの月の光を消してしまった。ふと「鵜飼」を思い出した。
 零時半頃には、「最終機」などの言葉が警報に出る。まだ数十機そこそこであるから「最終機」などと安心していられないように思ったが、電探ではたしかに押さえているんだから正確、まもなく空襲警報解除となり続いて警戒警報も解除となり、そして寝た。
 川崎にまだ焼けるところが残っていたかと不思議な気持。
◯夜半敵機来襲に、身のまわり品や机
前へ 次へ
全172ページ中97ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング