をかけていた。ようやく大きい穴がふさがり、今度は小さい穴にかかっていたが、土が足らないという。
 あとは英と晴彦にまかせ、陽子を伴って門の方へ引返す。と、多勢の人が煙の中から門へ入って来た。見ると菅野さん、羽山さん、松原さんたちである。
「どうしました?」「火が迫っています、今のうちに逃げないとあぶない」銀行の支店長をしている菅野さんが言う。
「まだ大丈夫ですよ、頑張れば喰いとめられますよ」「いや、もういけません、佐伯さんの方と、高階さんの方の火とが、両方からこっちへ押して来て、息がつまりそうです」
 婦人たちは口々に、早く待避せねばたいへんだとわめいている。私は逃げるつもりはなかった。「それでは家の裏から田中さんの畑へお逃げなさい。あそこなら大丈失ですから」教えてやると、昔ぞろぞろと家の庭を通って姿を消した。十人近い同勢である。松原大佐夫人が無言で、小さい身体を一行のあとに運んでいるのを見た。
 その前菅野さんの家は四ヵ所もえあがり、それはようやく消しとめたが、菅野さんは屋根へあがって消火しているうちに屋根からすべりおち、地上にしばらく伸びて口もきけなかった由。それ以来菅野さんは戦意
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