返ってやります」といった要旨。なお記者に所懐を語って曰く、「勝てると思う。日露役のときも重臣は勝てることはおろか、多分負けると考えていた。万が一にも敵を撃退し得ないかも知れぬと考えていた。だが頑張りが勝ったのだ。硫黄島が玉砕、占領されたことも負けとは思わぬ。敵アメリカに対し、精神的に大恐怖を与えたのがわが戦果で、この点勝ったといってよい」などと、勝てる自信を述べていた。
◯昨八日十七時、大本営発表で久方ぶりに軍艦マーチと陸軍マーチが響く。沖縄本島周辺にここ旬日あまり群って退かぬ敵艦船群に対し、わが特攻水上隊及航空隊が突入し、わが水上隊も戦艦一、巡一、駆三を撃沈した。かくて敵艦十五隻撃沈、十九隻撃破、その他未確認のもの少からずという戦果を掲げ、ために敵艦船は遂に沖縄本島の周辺から逃げだしたとある。リスボン経由の外電も六日、七日のわが猛攻を伝えているし、島上の敵軍も「ここは地獄を集めた地獄だ。あと二週間これが続けば、この戦は悲劇に終ろう」と悲鳴をあげている由。そのままには受取り兼ねるが、すさまじい戦闘がいよいよ始まり、決戦の決を見るのももうわずかの後に迫ったことを思わせる。
尚水上艦隊の
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