◯爆撃の直後、身近かにとんで来たものはすてきなケシゴムたくさん、百円札の束、反物など。これは鈴木さんの友達の話である。
◯首がとびこんで来て、われに向かい丁重に挨拶をしたという話もあるとて、村上先生大いに笑う。
◯艦載機来襲以来、待避壕はかなりものものしくなった。相当土をかぶり、ふたのないものは数を減じた。しかしまだまだである。

 三月十日
◯昨夜十時半警戒警報が出て、東南洋上より敵機三目標近づくとあり。この敵、房総に入らんとして入らず、旋廻などをして一時間半ぐらいぐずぐずしているので、眠くなって寝床にはいったら、間もなく三機帝都へ侵入の報あり、空襲警報となり、後続数目標ありと、情報者は語調ががらりと変わる。起きて出てみれば東の空すでに炎々と燃えている。ついに、大空襲となる。
◯発表によれば百三十機の夜間爆撃。これが最初だ。
◯折悪しく風は強く、風速十数メートルとなる。

 三月十三日
◯昨暁名古屋が大挙B29の夜間爆撃を受けた。東京夜襲より二日後で、ピッチをあげている。今度は風が強く、全く利敵風であった。
◯十日未明の大空襲で、東京は焼死、水死等がたいへん多く、震災のときと同じ
前へ 次へ
全172ページ中42ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング