うのだ。
◯安心していると、とつぜん空襲警報発令、山梨地区上を十数機編隊のB29が東進中と放送。これはいかんと寝床から出る。女房に昌彦を防空壕に入れろという。が女房は昌彦のそばに添伏していて、「いや、ここにいる」と頑張る。腎臓炎で旧臘から臥床の昌彦、昨日来熱があるので、動かしたがらないのはもっともである。が、そのうちに後続部隊の侵入を報じて来る。女房やっと決心して、昌彦を黄色い毛布にくるんで防空壕へかかえて行く。
◯敵は盛んにやって来た。四つ位の梯団《ていだん》であるらしい。最も近かったのは、どこか場所は分らないが、どこん、どこん、どこん、と続けざまに爆声聞え、壕の板がびりびりと鳴りひびいた。
◯報道放送によると、百五十機なりという。警報解除一時間にして、相当大きな火災も全部消えたという。
◯早耳の報道によれば、今日は尾久や日暮里附近がかなりやられたという話。
◯敵機去っていくばくもなく、また雪がぽたぽた降り来る。三度目の大雪か。
◯岡東浩君来る。ツナ缶、飴、化粧用クリームを貰う。うちからはねぎ、にんじん、馬鈴薯、かぶを少し分ける。徹ちゃんの置いていってくれた角壜のサントリー・ウイスキ
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