本格的であることを都民に知らせた。「東部軍管区情報」を都民が非常に期待するようになったのは、この日からだといっていい。
高射砲が鳴りだし、待避の鐘が世田谷警察署の望楼から鳴りだした。英《ひで》[#海野夫人]や松ちゃん[#海野家のお手伝いさん]などがまだぐずぐずしているのを叱りつけるようにせきたてて防空壕内に入れる。
この壕は、昭和十六年一月に一千円ばかり費やして作った。檜材のフレームを横に並べて、同じ檜材のボルトナットで締めた上、紙を巻いてアスファルトを塗り、これを何回かくりかえし、地中に埋めたもの。階段、二ヵ所の出入口、ハシゴ、床および腰掛け、換気孔などのととのったもので、今となっては得がたいもの。あのとき作っておいてよかったと思う。十四人ぐらいは大丈夫楽に入っていられる。
皆を中へ入れ、私は入口の階段に腰をかけて、壕内より見える四分の一の空を注意し、かつラジオの出す警報その他や、敵の爆撃の音や、味方の機や砲の音、待避の鐘の音などを注意していることにした。壕内は暖いが、この階段のところはやや寒い。板も冷える。直接土に接しているためであろう。
子供たちは待避中元気であり、わあわ
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