ちの隣組では棄権。せっかくの晴彦の誕生日も、これでは魚を祝ってやれない。そこでこの前買っておいた鮭缶をあける。白い御飯とごぼうとにんじんの精進揚げに、英の心づくしこもる。皆うまいうまいとたべる。

 十一月二十四日
◯ビタミンCの注射液がついに皆無となったので、やむを得ず探しに町へ出る。
◯浅草へ初めに行く。三月十日の空襲から二日後に行って以来のこと。小本堂出来、朱塗りの色も鮮やか。本堂建立のため、金五円也を寄進す。
◯仲見世はいうに及ばず、境内いたるところにつまらん物の店と、あやしき食い物店とあり、その数無慮二、三百軒。こっちも釣りこまれ、つまらぬものを買い込む。
 しかし浅草の景気がいいのは、この敗戦の秋に頼母しい事である。
 こういう人達の中から、新日本が生まれ出るかと思えば、感慨無量である。
◯小伝馬町から人形町、蛎殻町へかけて焼け残ったのは、奇蹟のように見えた。
◯カヤバ橋の焼け跡で、イモを出して昼食をとる。片手にアルミの凸凹水筒あり。目の前の食堂には、まぐろさしみ一人前金五円の大貼札があって、二十四、五人が列をなしていた。
◯きょうの買物
 ヘアピン 二十四本       
前へ 次へ
全172ページ中130ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング