たわけだった。壕から外へ出ると、ぶるぶるっと寒い。
◯田口※[#「※」は「さんずい+卯」、第4水準2−78−35、17−上−9、底本はこの字を「さんずい+「仰」のつくり」と作字上の誤り]三郎氏のB29の爆音聞き分け方の放送が始まり、つづいている。難解だ。普通の人には、あれではわかるまい。述べ方に工夫がほしい。日本の学者というと、なぜこのように人に伝授の仕方が拙いのだろう。飛行士の養成に手間どり、生産増大の出来ないのも、皆こんなところに大きな原因がひそんでいるのだと思う。
 私の場合は、放送を聞いているうちに少しずつわかってくるような気がするが、要するに説明はまずい。いい放送なんだが、惜しいことだ。
◯防空壕の中の夢で、敵機から焼夷弾を投下されるところをみている。ばかな話だ。
◯目下の私の服装は次[#底本では「次」は「下」]図のごとし。
[#カット「服装の図」入る。17−下段]

 十二月二十七日
◯一昨夜と昨夜とは敵機の来襲もなく、珍らしいことであった。おかげで暖かく寝られた。その後放送で初めて知ったが、二十五日夜八時にサイパン島へわが航空隊が突撃した由なり。そのために相手はこられなく
前へ 次へ
全172ページ中11ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング