方へ去る。朝方の味方機の消息を調べに来たのであろう。
◯徹ちゃん[#娘婿の永田徹郎海軍大尉]転勤の由。今の香取航空基地より、鹿児島県下の辺ピなところへ行くことになったという。
二月十三日
◯徹ちゃん、香取航空基地より親子を連れて、寸暇に顔を出してくれる。十五日はいよいよ九州へ飛行機で出発とのこと。十一時頃来て、二時半頃戻って行く。多分国分か鹿児島らしいという。
二月十五日
◯敵B29、六十機名古屋地区へ主力を、また三重県の宇治山田、浜松、静岡へも分力を以て来襲す。
東京へは七十三機ばかり来た。横浜方面と思われる方向で、えらい音がして地面がふるえた。(戸塚区へ投弾した事が、あとで分った)
◯戦果、十七機に損害を与う。わが方一機未帰還。
二月十六日
◯艦載機延べ一千機で関東、東海地区へ来襲。
戦闘機 F4Fワイルドキャット
[#ここから2字下げ、横組み右揃えで]
1500P
最大SP
500km
1500―
1800km
13mm機銃
[#ここで字下げ、横組み終わり]
戦闘機 F6Fヘルキャット
[#ここから2字下げ、横組み右揃えで]
2000H
600km
1850km
13×3
[#ここで字下げ、横組み終わり]
戦闘機 F4Vコルセア
[#ここから2字下げ、横組み右揃えで]
2000K
500km
13×2
[#横組みの下に、左右中央縦組みで]
逆カモメ型W
[#ここで字下げ、横組み終わり]
軽爆機 SBD3ダイドントレス
複
[#「複」の文字の下から2字下げ、横組み右揃えで]
1500
7×2
13×2
450kg
[#ここで横組み終わり]
軽爆機 SB24カーチスヘルダイバー
[#ここから5字下げ、横組み右揃えで]
450km
1450
[#ここで横組み終わり]
軽爆機 PBFグラマン・アベンジャー
[#ここから2字下げ、横組み右揃えで]
2名
or
4名
440km
13×3
600kg
1ton
[#横組みの下に、左右中央縦組みで]
胴太
[#ここで横組み終わり]
◯朝七時、まだ寝床にいたとき、警報鳴りひびく。この早さに、さてはと思う間もなく、東部軍管区情報が出て「敵小型機約五十機、南方より本土へ近接中」と伝えた。いよいよ敵機動部隊来ると、はね起きて万端を指図す。敵機はすぐには帝都へ来らず、主として房総方面の飛行部隊や軍事施設を攻撃し始めた。子供たちは敵機を見たというが、私は遂に見ずじまい。
午後五時迄に四度空襲警報が出て、四度とけた。しかし警戒警報は夜に入るもとけず。
帝都に入ったのは三、四編隊にすぎなかったが、わが地上火器は盛んに射った。あんなに射って弾丸がなくなりはしまいかと思う位に。
◯情報で伝えられた編隊の数は約三十であった。それで五百機位とにらんだが、発表は一千機内外ということであった。
◯房総、ヨコスカ、茨城の飛行場や軍事施設に対しては相当長時間攻撃した。本土上陸の企図か? 小笠原のどこかへ上陸の前提か?
◯発表によると敵機動部隊は十数隻の空母によるものといわれる。なお戦艦、空母を含む三十数隻の敵艦隊は硫黄島を攻撃中。
◯敵はビラをまいた。(茨城地区に)大東亜戦争に於いて最初。
◯放送は「明日も敵襲あるべし。敵機はふえるであろう」とのべる。
◯防空総本部、宮地直邦放送。
[#ここから2字下げ、ただし改行行頭の「・」のみ1字下げ]
・米は、欧州戦の当初焼夷弾を5%使ったが、今は60%位使っている。ドイツの工業都市の破壊は、爆弾によるに非ずして、焼夷弾による火災のためである。(テルミット)
・火焔噴射弾。
・時限爆弾。(数時間乃至数分後に爆発)
・大型焼夷弾。(炸薬も相当入っている)
[#ここで字下げ終わり]
◯徹ちゃんはどうしているか? まだ健在ならば、今夜は勇躍、敵機動部隊へ突込むだろう。飛行機が焼かれていれば口惜しいだろう。武運長久を祈ってやまぬ。朝子[#長女、永田徹郎海軍大尉夫人]も気が気であるまい。
◯運通省通告。しばらく東京及ヨコハマ着の切符発売停止(軍の者をのぞく)また京浜通過者の切符も同様なり。省線電車も売らぬ。今夜は省線電車は十時半にて終業し、約一時間半くりあげる。
◯高粱《コーリャン》の入りし米ながら、漸く今日配給となる。(十二日のものが十六日におくれた)
◯明日も一千機来るか、今度は都市攻撃をやりはせぬか――と予想する気持は、あまりいいものでない。さりながら実際に会うと、「なんだこれ位か」と期待外れがするもの、そして慣れて行くものである。東京は広い。なかなか命中とか、焼尽しとはならない。命中して一家散華すれば、これ仏の慈悲だと思うのである。生命あるかぎりは、敵と戦い、敵の攻撃を無効にし、そして敵を倒さん。
敵千機大西風に吹かれけり
敵千機大
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