るつもり。
◯水谷準君より来翰。延原氏夫妻へわれわれよりの贈物は、江戸川さんと小生とにて八百円位の座蒲団を贈ることにしてくれとの事なり。承諾の旨、返事す。実物さがしはこっちがこの病体ゆえ、すまぬ事ながら江戸川さんへお願いの事とする。
◯英、この数日、毎日の如くはげしい頭痛にて寝込む。昨日と今日とは睡眠剤のドルシンを〇・二グラムずつのみたり。(英の希望によりて)
◯私は昨日の雨にて、のどの加減はたいへんよくなったが、こんどは鼻をやられたらしく、しきりにくしゃみ出、洟《はな》をずるずるいわせる仕儀となった。
 これが風邪の第三回の開幕なり。
 昨年とちがって、今年はなぜこう風邪ばかりひくのか訳がわからず。昨年よりはずっと肥っているし、抵抗力もあるはずなんだが。もっとも精神力は非常に低下していることが自分にもよく分っている。

 十一月二十九日
◯鼻風邪いよいよひどく、昨夜は枕をぬらした。咽喉もいたい。
◯朝子より来翰。
◯「科学世界」の九・十月号と十一月号来る。安達嘉一君が科学文化協会の事務次長となりて最初の編集のものなり。新清にして仲々よろしく、就中《なかんずく》「原子力の将来」についての木村氏の記事と、マ司令部のROX氏の寄稿に大いに感動す。この旨、安達君へ手紙を認めた。
◯読者ウィークリーに「鼠色の手袋」八枚を書く。
◯力書房の田中氏、原稿用紙を持って来てくれる。
 松平維石の「キカ」の原稿を托した。
◯福田義雄君と吉水君来宅。ペニシリンの事、加藤ヨシノさんの肺炎のことなど話をする。

 十一月三十日
◯はや十一月も暮れんとす。
◯きょうは晴曇にて寒し。一日炬燵の中にいたり。
◯午後、血を吐く。気道より出たるか肺の中より出たるかはっきりしないが、相当固まっていて指でこすっても崩れない部分さえあったので、気道の方ではないかと思われる。村上先生来診。念のためとトロンボーゲン5ccを注射。
◯愛育社の「電気」を少し書く。
◯江戸川さんより速達あり、延原氏へ贈る座蒲団は、江戸川さんと小生の連名とする事に相談あり。値は一千円位。小生病気につき現品見つけ方及び送り方は全部江戸川さんを煩わすこととなる。
 なお、家の中の仕事といえども、やり過ぎるなと注意あり、返事を認めて、そのことよく守りましょうと申し送った。
 向う一年、ピッチを下げて、最低の仕事をし、最低の生活を保証せん。
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