械器具によって組合わされているのだ。
「おい本間君。この中に入ってくれたまえ」
博士はそういうと、いきなり僕の背中を押して、前へついた。と透明《とうめい》な大碗《おおわん》が、すっと上にあがった。その下へ僕がころがりこむのと、その透明な大碗が落ちて来てその中に僕をふせるのと、同時だった。
時間軸《じかんじく》逆《ぎゃく》もどり
大きな透明の碗《わん》の中にふせられてしまった僕は、覚悟の上とはいいながら、やはりあわてないでいられなかった。僕は碗から外へ逃げだし、行動の自由をとりかえしたいと思って、碗の内側をぐるぐると這《は》いまわった。が、どこにも脱けだすすき間は見つからなかった。
僕は、透明な碗のふちに手をかけて、この碗を持ちあげることを試みた。だが、それもだめだった。碗は非常に重い。カビ博士はあのようにこの碗をかるがるとあつかったのに……。
「もしもし、僕をここから出して下さい。いくら僕が標本勤務をひきうけたといっても、こんなに人格を無視した監禁《かんきん》をするなんてけしからんじゃないですか」
僕は大憤慨《だいふんがい》をして、透明碗の壁を両手でたたき続けた。
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