四十号、八十号。それだけ」
カビ博士は天井の方を向いて、まるで魔術師のように、装置の番号をいった。
すると、目の前におどろくべきことが起った。それまでは一面に平らな床《ゆか》であったものが、博士のことばが終るか終らないうちに、まるで静かな海面に急に風が吹きつけて波立ちさわぎ出すように、床がむくむくと動き出し、下から妙な形をしたものがせりあがって来た。それはすべて、にぶい金属|光沢《こうたく》を持った複雑な器械類であった。ほんのしばらくのうちに、円陣の中にはりっぱな実験装置が出来上がった。
平《たい》らな劇の舞台の上に、とつぜん大道具が組立てられ、大実験室の舞台装置が出来上ったようなものであった。その派手《はで》な大仕掛《おおじかけ》には、僕はすっかり魅《み》せられてしまって、ため息があとからあとへと出てくるばかりだった。
この装置群の中央に、直径が一メートルに三メートルほどの台があり、その上に透明な、やや縦長《たてなが》な大きな硝子様《ガラスよう》の碗《わん》が伏《ふ》せてあった。そしてその中の台の上には、何にもなかった。そのくせ、まわりの各装置は、うるさいほどに、さまざまな器
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