にあつくなった。
「実は………実は……」
僕は、先生の前に出たいたずら小僧《こぞう》の様《よう》に、どもった。
カスミ女史は、こっちをみて、にやにや笑っている。女史の方からみれば、僕がこんなに困っているのが面白くてならないのだろうがこっちは全身|汗《あせ》だくである。
「実《じつ》は、僕は二十年前の世界から時間器械に乗って、当地へやってきた本間という生徒なんです。申訳《もうしわけ》ありません」
「申訳ないことはありませんけれど、よくまあそんな冒険をなすったものねえ」
「はっ。ちょっと好奇心にかられたものですから……」
僕は頭をかいた。
「僕は見つかると、ひどい目にあうでしょうか」
「それはもちろんですわ」
女史は急にこわい顔になって肩をそびやかした。
「この国では時間器械による旅行者を厳重《げんじゅう》に取締っているのです。というわけは、あまりにそういう旅行者がこの国へ入りこんで、勝手なことばかりをして、荒しまわったものですから、それで厳禁《げんきん》ということになってしまったのよ」
「ははあ。彼等は一体どんなことをしたんですか」
「いろいろ悪いことをしましたわ、料理店に入って
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