しんさつしゃ》


「おや、タクマ君。君の料理はいやに量がすくないじゃないか。それに、僕の皿に盛ってある料理に較《くら》べると見劣《みおと》りがするじゃあないか。ははあ、君は料理を注文するときに、わざと遠慮《えんりょ》したんだね」
 僕はそういって、食卓越しにタクマ少年の顔を見た。
 タクマはそれを聞くと、にやにや笑い出した。
「お客さん。僕は遠慮なんかしませんよ。だってそうでしょう、ここは僕の姉の経営している料理店ヒマワリ軒なんですものねえ」
「でも、君。僕ばかりがこんなすばらしいごちそうをたべるんじゃ、気がひけるよ。君は遠慮しているのに違いない」
「そうじゃないんですよ、お客さん。そんな大きな声を出して、他の人に聞かれると笑われますよ。だって、食事にどんなものをたべるかということは、自分が勝手にきめることが出来ないんですものねえ」
「なんだって。料理店で食事をするのに、自分で好みの料理をあつらえることが出来ないと、君はいうのかね」
 そんなばかなことがあってたまるものか。僕はタクマ少年の言葉を信じかねた。
「そうですとも」タクマ少年は自信にみちた声でいった。
「私たちの現在の健康状
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