んて、そんな永い時間を待っていられないんだ。僕を時間器械へ入れてくれたあの友達辻ヶ谷君は、二時間か三時間したら、僕を元の世の中へ戻してくれると約束した。そんなら、今より僕は元の世の中へ呼び戻されるだろう。それではたいへん困る。どうしたらいいだろうか、黄金を持って帰るよりも、この方のことが重大であり、大至急《だいしきゅう》よい手をうたねばならない!)
どうしたらいいだろうか。
「来ましたよ。下町で一番にぎやかなニコニコ街です。さあ、下りる支度《したく》をして下さい」
タクマ少年が僕に話しかけたので、僕はびっくりして吾れにかえった。
「ああ危ない。もっとゆっくり道路を乗り移ればいいんです。おちついて下さい」
僕は、あやうく身体の平衡《へいこう》を失ってすってんころりんとするところを、タクマ少年が敏捷《びんしょう》に腕をつかんで引揚げてくれたので、醜態《しゅうたい》をさらさないですんだ。
無事に、動く道路から下りた。
すてきなにぎやかさだ。音楽が交錯《こうさく》して、聞こえて来る。五彩《ごさい》の照明の美しさ、それは建物を照らしているだけではなく、大空にも照りはえて虹《にじ》の国へ
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