のことを考えてみただけでも身ぶるいがする。あのすごい水圧に対して耐《た》える材料といえば、鉄材とセメントを使ってするにしても、たいへんな量がなければならない。それにさ、うっかりするとそれに穴があいて、水が町へどっと滝のように流れこんできたら、これはいよいよたいへんだよ。海底の町に住んでいる人は、ほとんど皆、おぼれ死んでしまわなければならないわけだからね。またその工事にしても何十年何百年かかるかもしれない……」
「待って下さい、お客さん」
タクマ少年はおかしさをこらえきれないという顔つきでいった。
「まさかお客さんは日本人が原子力を使うことを知らないとおっしゃるのじゃないでしょうね」
「原子力? ああそうか。あの原子爆弾の原子力か」
「いえ原子爆弾ではありません、原子力を使ってエンジンを動かしどんどん土木工事をすすめるのです。昔は蒸気の力や石炭や石油の力、それから電気の力などを使ってやっていましたが、あんなものはもう時代おくれです。原子力を使えばスエズ運河も一ヵ月ぐらいで出来るでしょう。また海の水をせきとめる大防波堤《だいぼうはてい》も、らくに出来上ります。昔のエンジンの出す力を、かり
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