でしたね。お客さまは遠いところから始めてこの町へいらしったので、この町の乗物をご存じなかったのですね」
「うん、まあそうだ」
「この乗物はたいへん便利に出来ています。つまり長いベルトが動いているのです。道が動いているといってもいいわけです。私たちはあの上へ乗りさえすれば、ベルトが動いて、ずんずん遠くへはこんでくれるのです。さあ乗ってみましょう。一二三で、一緒に乗れば大丈夫ですから。さあ一イ二イ三ン」
動く道路などというものに始めてお目にかかった僕は、気味がわるくて仕方がなかったけども、思い切ってタクマ君と一緒に、その動く道路へとび乗った。と、ふらふらとたおれかかるのを、タクマ少年は僕の腰をささえてくれたので、幸いにたおれずにすんだ。少年の頭は僕の胸のところぐらいしかない。
なるほどこれは便利だと、僕は感心した。動く道路の上に立っていると、歩きもなんにもしないのに、どんどんと遠くへいってしまうのであった。これならいくら遠方まで行ってもくたびれることはないだろう。
「さあお客さま。こんどはもう一つ内側の、もっと早く動いている道へ乗りかえましょう」
タクマ少年は、そういって奥を指して歩
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