うほどではなく、それよりもずっと人間に近い。とにかく、こんな奇妙な相手の身体と知っていたら、もうすこし正体をあらわすのを待ってもらった方がよかったとも思う。
「どうだね、君、気はたしかかね」
 僕の前にいた一きわ大きい魚人《ぎょじん》が、そういって、口からあぶくをふいた。


   海底の下


「大丈夫ですよ。君たちの姿を見て気が変になるなんて、そんな気の弱い者じゃない」
 僕はトロ族たちに、そういった。
「ふうん、どうかなあ。君たちヤマ族は、よく嘘《うそ》をつくからね」
 魚人《ぎょじん》がいった。
「さあ、そんなことより、話をつけよう。一体君たちトロ族は、われわれに対して何を希望するのかね。僕は出来るだけ、君たちの希望がとげられるように努力するつもりだ」
 僕は早く交渉を切上げてしまいたいと思ったので、その話を始めた。
「よろしい。われわれの不満を君に聞いてもらう――近来、君たちヤマ族の海中侵入《かいちゅうしんにゅう》はひどいではないか。われわれトロ族としては甚《はなは》だ不安である。前以《まえも》ってあいさつもなしに、どんどん海底まで侵入してくるとは、よろしくないではないか」

前へ 次へ
全184ページ中140ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング