よほど心配になると見えて、またぎゃあぎゃあと、水中電話器を通じて僕に話しかける。
 僕は羅針盤をにらみながら、百十五度の方向へ、よたよたと歩いていった。
 あたりは軟泥ばかりで、外《ほか》に海草も何にもない。魚群さえみえない。――いや、魚はいないわけではない。ぐっと踏んだ鉛の靴の下がぐらぐらと崩壊《ほうかい》するように感じたときは、かならず足もとから、まっくろなものがとび出す。それは深海魚《しんかいぎょ》であった。僕はそのいくつかの姿を、ヘッド・ライトの中にみとめたが、どれもこれもどす黒く、そして醜怪《しゅうかい》な形をしていて魚らしくなかった。魚と両棲類《りょうせいるい》の合の子としか見えなかった。
 ふだんは何一つ光の見えないこの深海にも、ちゃんと楽しく棲《す》み暮《くら》している動物の世界があるのだ。いや、動物だけではなかろう。僕には見えないが、おそらく原始的な微生植物《びせいしょくぶつ》も、ここをわが世とばかりに活動して繁茂《はんも》しているのであろう。
 行けども行けども、どこまで行っても単調な同じ地形ばかりであった。僕は少々ばかばかしくなった。ひょっとしたら、カビ博士にうま
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