それは、かねて僕が抱《いだ》いている疑問に、十分にこたえてくれたようだ。
「ねえ、先生。いや、辻ヶ谷君」
 僕は遂にそれをいってしまった。
 そういったときの博士のおどろきはどんなであろうかと、僕はそれを喋《しゃべ》るよりも前から興奮の絶頂《ぜっちょう》にあったのだが、博士は僕の期待に反して冷然《れいぜん》としていた。そしていつもの調子の声でいった。
「君は、今頃になって、それに気がついたのかね」


   奇妙な再会


「ああ、ほんとうに君は辻ヶ谷君だったのか、あのウ、君が二十年後の辻ヶ谷君で、そしてカビ博士なのかい」
 そうとは思っていたにしろ、カビ博士がこうして素直《すなお》にそれを認めたとなると、僕はあらたな狼狽《ろうばい》におちいらないわけにいかなかった。辻ヶ谷君なる学友は、今もあの東京の焼け野原に、時間器械をまもって計器を読んでいることとばかり思っていたのに、こうして僕のそばに何日もいっしょにいたとは、全く思いがけないことだ。
「君のいうとおりじゃ。ミドリモ君」
 ミドリモ君? 僕は、そういわれて博士の顔を見直した。
「ミドリモて、なんだい。君が今いったミドリモ君てえ
前へ 次へ
全184ページ中120ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング