泣いているようでもある。
(僕はもう死ぬんだな)
 僕はそう悟《さと》った。死にたくない。しかしどうにもならない。ああ神さま!
 それからどのくらいの時間が経《た》ったか、僕は覚《おぼ》えていない。とにかくぼんやりと気のついたとき、僕はしきりに口から水を吐いていた。いや、正確にいえば水を吐かされていたのだが……。


   遠大なる実験案


 僕は、うつ向いて、水を吐《は》かされていた。
 胃袋の下に、砂枕《すなまくら》のようなものがあたっていた。そして誰かが、僕の背中に、ぐいぐいと力を加える。そうすると僕は、障子がひきさけるような音をたてて、ごぽごぽと下へ水を吐くのだった。
 僕には見えないが、僕の頭の上で、がやがやと喋《しゃべ》っている人声がする。それは非常に遠いところで喋っているようにも思われる。僕の知覚は、まだ麻痺《まひ》状能を脱し切っていないのである。その証拠に喋っている人声が急に遠くなったり、また僕が水を吐いていることが分らなくなって花園の中に犬を追いまわしている夢の中に入ってしまったりした。僕の身体の方々には、三重にも四重にも違った疼痛《とうつう》があって、それに耐える
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