井は、容赦《ようしゃ》なく僕の頭をおさえつける。僕はさっきから無理な姿勢をとり首《くび》を横にまげて泳いでいるので、頸《くび》の筋《すじ》がひきつって痛くてたまらない。そのうちに鼻の孔も口も、水に洗われるようになった。いよいよ水が天井につきそうなのである。僕は、したたか水を呑んでしまった、水なんか決して呑みたくないのに。
 今や僕は溺死《できし》の一歩手前にあった。顔を上に向けた。硝子天井に接吻《せっぷん》するような恰好である。そして立ち泳ぎだ。頸をうしろに無理に曲げているので、痛いやら苦しいやらで生きている心持もない。「助けてくれ」と叫びたいのだがそんな声も出ない。そんな声を出して叫ぼうものなら、たちまち身は水中に沈んで、溺死をせねばならぬ。
 苦しい立泳ぎが、一層苦しくなる。浮力がなくなり、いくたびとなく、ずぶりずぶりと水中にもぐる。これ以上水を呑まないようにと息をつめるものだから、再び水面へ浮かびあがるまでの息苦しさったらない。ああ、何だって僕をこんなに苦しめるのか。
 もう欲もなんにもいらないと思った。助けてくれぃだ。もう二十年後の世界に逗留《とうりゅう》する欲もなんにもなくな
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