いだろう。パチンコの的矢と来ては、返事をする代りにピストルの弾丸を送る奴だからねえ。わしも彼奴に前後三回、身体に穴をあけられたよ」
「どうも済まん。それをいわれると、おれは胸を締められる想いだ。ねえ、何とかして貰えんだろうか。一生のお願いだ。哀れなる烏啼天駆を助けてくれ」
「うん。外ならぬ貴公から是非にと頼まれたのは前代未聞じゃから、何とかしてあげたいものだ。どうするかね、これは……」
烏啼の心友は、ひどい猫背を一層丸くしてしばらくじっと考えこんでいたが、やがて彼は黒眼鏡の奥に、かっと両眼を開き、両手をぽんと打った。
「よし、いいことを思いついた。それを思いついたは、貴公の幸運というものじゃ。こういうことで行こう。近う寄れ」
そこでかの心友は猫背を一層丸くして、烏啼の耳に何事かを囁《ささや》いたのであった。
「えっ、彼奴にピストルを持たせて……ふんふん、ええっ、やっちまうのか。それでは虎を野へ放つようなもの……え、大丈夫か。ふんふん、ふうん。……そうかなあ。いや君を信ずるよ、僕は。よろしい、どうか頼む」
烏啼は、手を合わせて心友を拝んだ。
お志万《しま》は二十二
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