がて森かげの池の水が、ぽちゃんと鳴って、貫一無念のピストルを呑《の》んだ。
五体の秘仏の前で、一心発願した的矢貫一が、お志万と結婚の式をあげた。
烏啼も大よろこび、お志万はいうに及ばず貫一も今は万更《まんざら》ではない面持で、お志万の手を握って放さなかった。
眷族《けんぞく》や仲間が百名ちかく集っての盛大な酒宴が開かれ、盃は新郎新婦へ矢のようにとんだ。
宴の半ばに二人連れの客が、新郎の前にぴたりと座った。貫一はその客を見て愕いた。一人は猫背に黒眼鏡の、有名な探偵袋猫々であったし、もう一人は縞馬服の例の刑事であったから。
「わっはっはっ」と、貫一の横に座っていた烏啼が大きく笑った。
「貫一。このお二人さんによくお礼を申上げな。これはお前たちの大恩人だからね」
「この幽霊め、また今夜も出て来たか」
「おい、そんなことをいってはいけない。この方は、袋猫々先生が特に探して来て下すった福の神で、実はこの方は、戦争で両腕両脚をなくされて、手足四本とも義手義足をはめられていられる方なんだ。いいかね、そこでお前は思い当ることがあるだろう」
「おお……」
「義手や義足をピストルで撃ってみても、
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