●ダンス(カンツリー・ダンス)[#「●ダンス(カンツリー・ダンス)」は太字]
歌島 定子 玉川 砂子 大井 町子 御門 秋子 三条 健子 辰巳 鈴子 水町 静子 小牧 弘子 六条 千春
●フィナーレ[#「●フィナーレ」は太字]
平河みね子 辰巳 鈴子 歌島 定子 柳 ちどり 小林 翠子 香川 桃代 三条 健子 海原真帆子 紅 黄世子
第五・ナンセンス・レビュー弥次喜多
●第一景・プロローグ[#「●第一景・プロローグ」は太字]
喜多八[#「喜多八」は太字] 丸木 花作 弥次郎兵衛[#「弥次郎兵衛」は太字] 鴨川 布助
●第二景・大阪|道頓堀《どうとんぼり》[#「●第二景・大阪|道頓堀《どうとんぼり》」は太字]
舞妓[#「舞妓」は太字] 紅[#「紅」に丸傍点] 黄世子[#「黄世子」に丸傍点] 歌島 定子 三条 健子 辰巳 鈴子 香川桃代 平河みね子
喜多八[#「喜多八」は太字] 丸木 花作 弥次[#「弥次」は太字] 鴨川 布助
●第三景・嵐山|渡月橋《とげつきょう》[#「●第三景・嵐山|渡月橋《とげつきょう》」は太字]
妙林[#「妙林」は太字] 鷹司 風子 尼僧甲[#「尼僧甲」は太字] 玉川 砂子 同乙[#「同乙」は太字] 大井 町子 同丙[#「同丙」は太字] 水町 静子 同丁[#「同丁」は太字] 御門 秋子
●第四景・琵琶湖畔《びわこはん》[#「●第四景・琵琶湖畔《びわこはん》」は太字]
薬売[#「薬売」は太字] 武智 太郎 薬屋娘お金[#「薬屋娘お金」は太字] 柳 ちどり お銀[#「お銀」は太字] 海原真帆子 喜多[#「喜多」は太字] 丸木 花作 弥次[#「弥次」は太字] 鴨川 布助
●第五景・山賊邸展望台[#「●第五景・山賊邸展望台」は太字]
首領[#「首領」は太字] 松田待三郎 中国人甲[#「中国人甲」は太字] 田方 青二 同乙[#「同乙」は太字] 春山田之助 同丙[#「同丙」は太字] 丸山 彦太 唐子の娘[#「唐子の娘」は太字] 松浦 浪子 柳[#「柳」に丸傍点] ちどり[#「ちどり」に丸傍点] 東路 艶子 歌島 定子 川島 武子 花村 京子 三条 健子 辰巳 鈴子 喜多[#「喜多」は太字] 丸木 花作 弥次[#「弥次」は太字] 鴨川 布助
●第六景・奈良井遊廓《ならいゆうかく》[#「●第六景・奈良井遊廓《ならいゆうかく》」は太字]
花魁初菊[#「花魁初菊」は太字] 花柳 春子 同赤玉[#「同赤玉」は太字] 山村 蘭子 提灯持[#「提灯持」は太字] 奈良木 清 元永 敏夫 金棒引[#「金棒引」は太字] 清洲 蝶子 神田 玉子 禿[#「禿」は太字] 海原真帆子[#「海原真帆子」に丸傍点] 新造[#「新造」は太字] 玉川 砂子 大井 町子 水町 静子 御門 秋子 芸者[#「芸者」は太字] 小牧 弘子 香川 桃代 平河みね子 小林 翠子 喜多[#「喜多」は太字] 丸木 花作 弥次[#「弥次」は太字] 鴨川 布助
痺《しび》れる脳髄!
もし此処で卒倒《そっとう》したらば、それで万事《ばんじ》休《きゅう》すだ!
弦吾は無形《むけい》の敵と闘った。血を油に代えて火を点じ、肉を千切《ちぎ》って砲弾の代りに撃った。何とかして、この中から義眼のレビュー・ガールの、名前を見付け出したい。その張りきった焦躁《しょうそう》で、舞台の方に向けている眼は空洞《うつろ》になろうとする。
――いつの間にやら、第三コメディ「砂丘《さきゅう》の家」は幕となった。弦吾は同志帆立に脇腹《わきばら》を突つかれて、慌《あわ》てて舞台へ拍手を送った。途端《とたん》に、
「おや?」
弦吾は、なにかしらハッとした。霊感《れいかん》の迸《ほとばし》り出でようという気配《けはい》を感じた――子供のときから、不思議な癖《くせ》で……。
(そうだ。あの消去法《しょうきょほう》という数学、あれを応用して一つやってみよう、よし!)
彼は遂《つい》に一つのプランを思いついた。頭脳は俄《にわ》かに冷静となった。科学者だった彼の真面目《しんめんもく》が躍如《やくじょ》として甦《よみがえ》った。消去法とは一体どんな数学であるか。
そのときベルが、喧《けたたま》しく鳴った。ジャズに囃《はや》されて重い緞帳《どんちょう》が上っていった。いよいよ第四の「ダンス・エ・シャンソン」の幕が開いたのだった。
何よりも先ず第一の問題は、誰が義眼を入れているかを発見することだった。
舞台では、飛び上るようなメロディーにつれて七曲の第一、
ダンス(木製《もくせい》の人形《にんぎょう》)
が始まった。赤と白とのだんだらの玩具《おもちゃ》の兵隊の服を着、頬っぺたには大きな日の丸をメイク・アップした可愛《かわ》いい十人の踊り子が、五人ずつ舞台の両方から現れた。
タッタラッタ、ラッタッタッ。
ラッタラッタ、タッタララ。
踊り子たちは、恰《あたか》も木製の人形であるかのようにギゴチなく手足を振った。
(おお、このなかに、義眼を入れた女が居るか?)
眼を見張ったが、こう遠くては判らない。と云って今さら舞台の前のカブリツキまで出られないし、たとい出てみたところで何しろ小さい眼のことだ。義眼と判るとまで行くまい。
QX30[#「30」は縦中横]の笹枝弦吾《ささえだげんご》は、呆然《ぼうぜん》として舞台の上に踊る彼女達を見入った。
そのとき彼の眼底《まなぞこ》に映った一人の踊り子があった。その踊り子は、他の九人と同じように調子を揃えて踊っているのであるが、何だかすこし様子が変である。
どう変なのかと、尚《なお》も仔細《しさい》に観察をしていると、成程《なるほど》一つのおかしいことがある!
その踊り子は頭を左右に、稍《やや》振《ふ》りすぎる嫌いがあるのだ。
いや、もっと別の言葉で云うことが出来ると思う。――その踊り子は首を左に傾《かたむ》けているうちに、急に驚いたように首を右に傾《かたむ》け直すのだった。首を、その逆に右から左へ傾け直す行動《モーション》は自然に円滑《えんかつ》に行われるのだった。唯《ただ》左に曲っている首を右に傾け直すときに限り、非常に不自然な行動《モーション》が入った。
もっと別の言葉で云える。つまりそんな不自然な行動も左の眼が悪いからこそ起るのだ。左の眼が悪いときは、悪い方の眼は見えないから右の一眼《いちがん》で前面《ぜんめん》を見ることになる。そのためには顔を正面に向けていたのでは、左の方が見えない。それを補うためには右の眼を身体の中心線の方に寄せる必要がある。その時に顔を曲げねばならぬ。このとき人間は首を左へ曲げる!
左眼の悪い人間は、つまり、常に左に首を曲げている。しかし踊り子がいつも左へ傾いた顔をしていたのでは美感《びかん》上困る。そこで気のつく度《たび》に、ヒョイと首を逆にひねる。この場合、右へは、右へ振ったが振りすぎて人目《ひとめ》を引くようになる。そして踊っている裡《うち》に、つい習慣が出て首が自然に左へ曲る。気がついてハッとすると、不自然にギクリと首を右へ曲げる。――これだ、これだ。
あの、首を振り過ぎる女が、求める副司令なのだッ。しめた!
7
(しめた)と喜んではみたが本当に喜ぶにはまだ早かった。何故なら彼女は他の九人と同じ「木製《もくせい》の兵隊さん」だった。どれが彼女の名前やら判らない。
(弱った。やはり呪《のろ》いのプログラムだッ)
弦吾は、改めてプログラムを呪った。
そうこうする裡に同志百七十一名の生命は、刻々《こくこく》に縮《ちぢま》ってゆく。そうだ、こうしては居られない。
(例の試みをやってみるか)
彼は暫《しばら》くプログラムの表面を見ていたが、今の「木製の人形」に出ている十人のレビュー・ガールの名前を胸のうちに諳《そら》んじた。
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六条《ろくじょう》 千春《ちはる》 平河《ひらかわ》みね子 辰巳《たつみ》 鈴子《すずこ》 歌島《かしま》 定子《さだこ》 柳《やなぎ》 ちどり 小林《こばやし》 翠子《すいこ》 香川《かがわ》 桃代《ももよ》 三条《さんじょう》 健子《たけこ》 海原《かいばら》真帆子《まほこ》 紅《くれない》 黄世子《きよこ》
[#ここで字下げ終わり]
この中に彼女の名前があるのだ。この出演人員を※[#丸1、1−13−1]としよう。
ところで一つ前の「砂丘の家」には彼女は出なかった。しかしこれと※[#丸1、1−13−1]との出演人員を較《くら》べると、両方に出演している女が四人もある。「近所の娘」をつとめる香川桃代、平河みね子、小林翠子、六条千春の四人だ。するとこの四つの名前には彼女の名前はないのだから、※[#丸1、1−13−1]の十人から先ず消し去ってもよい。すると残りは六人となる。
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辰巳 鈴子 歌島 定子 柳 ちどり 三条 健子 海原真帆子 紅 黄世子
[#ここで字下げ終わり]
だけが残る。この中の一人が、あの女なのだ。
QX30[#「30」は縦中横]は、今や神を念《ねん》じた。この調子で、敵の副司令の義眼女の名前を知らしめ給え。
「木製の人形」が引込むと、次はプログラムに随《したが》って、「シャンソン 朝顔の歌」それから「ダンス 美《うる》わしの宵《よい》」いずれも彼女は出ない。「シャンソン 遥かなるサンタ・ルチア」も出ない。次の「ダンス・オー・ヤヤ」にも出ない。そして次の「ダンス・カンツリー」に移った。
これにも彼女は出なかったが、大いに注意すべき事がある。それは例の残った六人の中の三人、すなわち辰巳鈴子、三条健子、歌島定子が出演していることがプログラムの上から読まれた。これは何を意味するかというと、彼女はその三つの名前の中には無いということ――果然《かぜん》、敵の副司令の名前は、残りの三つの名前の中にあるという結論になった。ああ、その三つの名前!
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海原真帆子《かいばらまほこ》 柳《やなぎ》 ちどり 紅《くれない》 黄世子《きよこ》
[#ここで字下げ終わり]
利鎌《とがま》を振りまわしている死の神はわれ等の同志百七十一人の許《もと》を離れて、いまや刻々《こくこく》敵の副司令へ迫《せま》りつつあるのだ。
さて残る三人は、どこでそれぞれ判るであろうか。
QX30[#「30」は縦中横]は、とどろく心臓を押えてプログラムの先の方を調べて見た。
判る、判る!
次の演出は、初めに返って、第一ナンセンス・レビュー「弥次喜多《やじきた》」二幕十二場だ。辿《たど》ってゆくと、この中の第二景「大阪|道頓堀《どうとんぼり》」のところで例の三人のうち、紅黄世子[#「紅黄世子」に丸傍点]だけが他の二人に別れて出演するのだ。
それから、それから……。
残る海原真帆子と柳ちどりとは、第四景の「琵琶湖畔《びわこはん》」に茶店娘《ちゃみせむすめ》お金とお銀で一緒に出る。さても焦《あせ》らせることではある。
ところで第五景の「山賊邸《さんぞくてい》展望台」では唐子《からこ》の娘として、柳ちどり[#「柳ちどり」に丸傍点][#「柳ちどり」は底本では「紅黄世子」]が出る。
第六景の「奈良井遊廓《ならいゆうかく》」では残りの海原真帆子[#「海原真帆子」に丸傍点]が出る。これで全部判ったことになる。
だが、此《こ》の第六景「奈良井遊廓」まで待つ必要はない。既に一つ前の第五景「山賊邸《さんぞくてい》展望台」で、残る二人のうち柳ちどり[#「柳ちどり」は底本では「紅黄世子」]が判るのだから、あとの一人は第六景を見て確《たしか》めずとも判る筈《はず》だった。――敵の副司令の断頭台《だんとうだい》はこの第五景で、切って放たれるのだ。
QX30[#「30」は縦中横]笹枝弦吾は、歯を
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