ヲ本日午後十時マデニ報告シ得ザルトキハ、在京《ざいきょう》同志ハ悉《ことごと》ク明朝《みょうちょう》ヲ待タズシテ鏖殺《おうさつ》セラルルコトヲ銘記《めいき》セヨ。
[#ここで罫囲み終わり]
「死線《しせん》は近づいたぞ」
「かねて探していた敵の副司令が判ったというわけだな」
「ウン、義眼を入れたレビュー・ガールとは、うまく化けやがった」
「だが間諜座へ入ることは、地獄の門をくぐるのと同じことだ。固くなったり、驚いたりして発見されまいぞ」
「あのなかは敵の密偵《みってい》で一杯なんだろうな」
「毎夜、観客の中に百人近くの密偵が交《まじ》っているということだ。そして何か秘密の方法で、舞台上《ぶたいうえ》の首領と通信をしているそうだ」
「首領よりか副司令のあの小娘《こむすめ》が恐ろしいのか」
「そうだ。あの小娘は悪魔の生れ代りだ」
「するとあの副司令を今夜のうちに、こっちの手でやッつける手筈《てはず》になったんだな」
「ウン。――どうしてやッつけるかは知らないが、副司令のやつ、義眼を入れてレビュー・ガールに化けているてぇことを、嗅《か》ぎつけられたが運の尽《つ》きだよ。おお、もう五時半だ。あ
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