夜貴郎がやってくれたと同じようにお千さんの始末をするのを手伝ってくれたのよ。もちろん、すべての計画と命令とは、あたし一人がやったんだわ」
「人を殺してどうするんだ」
「そんなことはよく分っているじゃないの。あたしはただ貴郎が欲しいばっかりよ。だからそれを邪魔する者を片づけたばかりなんだわ」
 杜は大きくブルブルと身慄いした。
「――ああ僕は、この手でとうとう人を殺してしまったのだ。ああ、もっともっと前に気がつかなけりゃならなかったんだ。先刻《さっき》か、いやいや。もっと前だ。お千が殺された時か。いやいやもっともっと前だ。そうだ震災になる前に考えて決行しなきゃならなかったんだ。ああもう遅い。とりかえしがつかない」
 そういって、杜はわれとわが頭を握《にぎ》り拳《こぶし》でもってゴツンゴツンと殴《なぐ》った。その痛々しい響は、物云いたげな有坂の下垂《かすい》死体の前に、いつまでも続いていた。


     13[#「13」は縦中横]


 杜はミチミを連れて、久方ぶりで郷里に帰った。今はもう誰に憚《はばか》るところもなく、一軒の家を借り同棲することとなった。いや憚るところもなくといっても、
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