嗟《とっさ》に、その二つの証拠品を、マッチ函の中に収《しま》った。これで血の脅威からは脱れることができた。
もう何か残っていないかと、あたりを見廻した。
「おお、これァ何だッ」
妙なものがお千の寝床の向う側に落ちていた。拾いあげてみると、それは古風な縫い刺し細工の煙草入であった。彼は急いで中を明けてみた。中には口切煙草が沢山入っていた。その煙草は「敷島」だった。
「ああ『敷島』だ。――」
胸躍らせながら、彼は中に残っている煙草の数を数えた。丁度十六本ある。
十六本の「敷島」――そして土間に落ちている四本の「敷島」の吸殻!
これ等は、杜が事件に対して嫌疑薄《けんぎうす》であることを証明してくれるであろうと思ったので、そのまま放置して置くことにした。彼は煙草入れを、また元のように、お千の寝床の傍に抛《ほう》りだした。
だが、この煙草入れの持ち主は、誰であろうか?
夜がすっかり明け放れた。
戸外は大きな叫び声がしている。誰か通行人が、お千の死体を見つけたのだろう。杜は外に出たものか、小屋の中に待っていたものかと思案に暮れたが、どうしても小屋の中にジッとして居られずになった。そ
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