が当然陣頭に立って捜査せらるべき筋合のものであると確信いたします」
「一体《いったい》誰ですか、その重大人物博士とやらいうのは……」
「赤見沢《あかみざわ》博士のことです。あの有名な実験物理学の権威《けんい》、そして赤見沢ラボラトリーの所長、万国《ばんこく》学士院会員、それから……いや、後は省略しましょう。ここまで申せば、課長さんも赤見沢博士の重大人物たることをよく御了解《ごりょうかい》になるでしょう」
「もちろんです」課長は勢い上、そう応《こた》えなければならなかった。「赤見沢先生が失踪されたとは、これは初耳ですな。それは何時《いつ》のことですか」
「昨夜以来、お邸《やしき》へお帰りがない。お邸と申しましても、それはラボラトリーの一室ですが……。私は昨夜はお目に懸《かか》る約束になっていたので博士の御帰りを待って居りましたが、遂《つい》に博士はお帰りにならず、本日午前十時になっても姿をお現わしになりません。それ故にこれは大変だと思い――今までそんな約束ちがいは一度もありませんでしたからな――それで目賀野閣下に御相談をし、こちらへ駈付《かけつ》けましたような訳です。如何です。昨夜何か都
前へ 次へ
全85ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング