》となり、煙のなかに逃げまどう人の形があったが、その後のことは、帆村も田鍋課長も見極《みきわ》めることが出来なかった。突然窓から吹きだした紅蓮《ぐれん》の炎に、肩車担当の二警官はびっくり仰天《ぎょうてん》、へたへたとその場に尻餅《しりもち》をついたからである。帆村と課長は、弾《はず》みをくらって大きく投げだされ、腰骨をいやというほど打って、しばらくは起上ることが出来なかった。
 そのうち火勢はずんずん拡《ひろ》がって、赤見沢博士のラボラトリーはすっかり火に包まれてしまい、手のつけようもなくなったが、それは研究室内にあった油と薬品が、このように火勢を急に強めたものに違いなかった。
 課長が帆村たちと共に再び立上り、燃える建物をいくたびもぐるぐる廻って警戒につとめると共に、機会があれば、中へとびこんで何か目ぼしい品物を取出そうとあせったけれど、遂《つい》に研究室の方には入ることが出来なかった。そしてかの美貌の男か、美女か、小山すみれかに行逢《ゆきあ》えば、直ちに補えるつもりでいたけれど、結局この重要なる三人の人物を空《むな》しく逸《いっ》してしまった。
 駆《か》けつけた消防隊の手で、完全
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