足らしい腫《は》れぼったい瞼《まぶた》や、かさかさに乾いた黄色っぽい顔面とが不釣合に見えた。
(目賀野氏はもはや閣下ではない筈ですが……)と皮肉をいってやりたくなった田鍋課長だったけれど、それは差控《さしひか》えることにして、
「どういう人物だか、詳しくお話下さらんので、われわれには正体が分りませんが、とにかく家出人の捜査申請《そうさしんせい》は本庁でも毎日受付けて居りますから、どうぞ届書《とどけしょ》を出されたい」
と返答をした。
「いや、これは失礼をいたしました。故意にその人物の素性《すじょう》などを隠そうとしたものではなく、その人物が如何なる人であるかを説明するには相当長い説明が要《い》りますので、とりあえず重大人物と申上げたわけでありまするが……」
「お話中ですが、われわれは非常に多忙でありますし、且《かつ》又《また》非常に重大事件を数多抱えて居りますために、なるべくつまらんことでわれわれを煩《わずら》わさないように願いたい。いやもちろん目賀野先生の紹介状に対して敬意を表しないというわけではありませんが、とにかく本課では目下数多の重大事件を抱えこんでいる――今も申した通りです
前へ
次へ
全85ページ中6ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング