せる。
「開いていいですね」
「ああ、あけてくれ。丁重《ていちょう》に扱《あつか》えよ」
「はあ」
臼井は、鞄についている金色の小さい鍵を使って、そのスーツケースを開いた。
鞄の中には杉の角材《かくざい》と見えるものが四本と、新聞紙と見えるものが十四五枚とが入っていることは、さっき調べたとおりであった。
「さっきは、ひやひやしたよ。これを調べているうちに一件がもそもそ動き出しやしないかなあと思ってね」
「はあ」
「とにかく、ひどく心配させたが、これをこっちへ引取ることが出来たのは非常な幸運だった。――いや、君の骨折《ほねおり》も十分に認める。さあ、その材木みたいなものを、外に出したまえ。そっと卓子へ置くんだよ。乱暴に扱うと、急に跳ねだすかもしれないからなあ」
目賀野は、なんだか訳のわからない無気味なことを喋《しゃべ》って大恐悦《だいきょうえつ》の態《てい》であった。
臼井は、鞄の中から角材を出した。四本とも皆出して、卓子の上にそっと置いた。また新聞紙も皆出した。鞄の中は空っぽになった。
「さあ、これでいい訳だ。おい臼井、その鞄を閉じてくれ」
目賀野の命令どおり、臼井は鞄の蓋を
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