にあるんだと思うんですね。それでさ、あの万沢《まんざわ》とかいう男が小山すみれ嬢を唆《そその》かして、仔猫利用の吊上《つりあ》げ装置を作らせたんだと解釈《かいしゃく》する」
「どうしてそうなるのかね」
「博士の人形も焼けちまい、すみれさんも焼け死んだので、はっきりしたことは分らないけれど、あの博士の人形は猫又の浮力――というか重力消去装置の力というか、それを利用しで浮き上る力を持たせてある。靴に仕掛けた放射線計数管は、ラジウムの在所《ありか》を探すための装置だ。無電の機械は、計数管に現われる放射線の強さを放送する。それからもう一つ、あの人形には電波を受けて、靴の下に仕掛けてある浚渫機《しゅんせつき》みたいな、何でもごっそりさらい込む装置――あの装置を動かせるようになっているんだと思う。つまり電波による操縦《そうじゅう》で浚渫機を動かすんだ。これだけのものを、あの人形は持っていたと思う」
「そんなものを、どうする気かな」
「そこでだ、悪漢《あっかん》一味は、あれを持ち出して人形を歩かせ、計数管の力を借りて、ラジウムの在所を確かめる。
人形がちょうどラジウム二百|瓦《グラム》の容器の上に来たとき、放射線の強さは最大となるから、そのとき悪漢一味は電波を出して、あの靴の下に仕掛けた浚渫機を働かせる。つまりごっそりと、ラジウムの容器を、あの浚渫機の爪《つめ》の間にさらえ込むのさ」
「ふうん、なるほど」
「それからこんどは、例の猫又の力を借りて、人形ごとずっと上へ浮き上らせるわけなんだが、僕にも分らないのは、重力消去装置の力を借りる必要のあるラジウムの隠《かく》し場所とは一体どこなんだか、見当がつかないんだ」
「はてな、一体どこなんだかね。そういうへんな人形の力を借りなければ取出せない場所というと……」
 田鍋課長にも、全く見当がつかなかった。


   椿《つばき》の咲く島


 椿の花咲く大島の岡田村の灯台《とうだい》のわきにある一本の大きな松の木の梢《こずえ》に、赤革のトランクがひっかかっていた。
 それを発見したのは、早起きをして崖《がけ》っぷちで遊んでいた官舎《かんしゃ》の子供たちだった。それからみんなに知れわたって、騒ぎは絶頂《ぜっちょう》に達した。
「誰があんな高いところまで登って、鞄をくくりつけでいったろう。不審《ふしん》なことだ」
 まことに不審の至《いた》り
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