柿色の紙風船
海野十三
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)林檎《りんご》のように
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大変|突飛《とっぴ》な
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)それがし[#「それがし」に傍点]なのである。
−−
「おや、ここに寝ていた患者さんは?」
と林檎《りんご》のように血色《けっしょく》のいい看護婦が叫んだ。彼女の突《つ》っ立《た》っている前には、一つの空ッぽの寝台《ベッド》があった。
「ねえ、あんた。知らない?」
彼女は、手近《てぢか》に居た青《あお》ン膨《ぶく》れの看護婦に訊《き》いた。
「あーら、あたし知らないわよ」
といって編物の手を停めると、グシャグシャにシーツの乱《みだ》れているその寝台の上を見た。
「あーら、本当だ。居ないわネ」
「ど、どこへ行ったんでしょうネ」
「ご不浄《ふじょう》へ行ったんじゃないこと」
「ああ、ご不浄へネ。そうかしら……でも変ね。この方、ご不浄へ行っちゃいけないことになってんのよ」
「まあどうして?」
「どうしてといってネ、この方、つまり……あれなの
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