《か》のとき早《はや》しで、彼は、小器用《こきよう》に指先を使って、ラジウムを掏《す》りとったに違いなかった。
そのことについて今になって気がついた私は、刑務所の門前で運転手に化けると、刑務所の門前で出獄したばかりの彼をうまうまと誘拐《ゆうかい》したのだった。そしてあの荒れ小屋に連れこむと、身の自由を奪っていろいろと折檻《せっかん》したが、強情《こうじょう》な彼奴は、どうしても白状しなかった。私は怒りのあまり、遂に最後の手段を択《えら》んだ。彼の身体をグルグルと麻縄《あさなわ》で縛りあげると、ゴロリと床の上に転がした。そのまま幾日も抛《ほう》って置いた。無論一滴の水も与えはしなかった。だから彼は遂《つい》に飢餓《きが》と寒さのために死んでしまったのだった。
私は彼の身体の冷くなるのを待って縄を解いた。そして素裸にすると全身を改《あらた》めた。そのときあの左|肋骨《ろっこつ》下の潰瘍《かいよう》を発見したのだった。
「そうら見ろ。貴様がラジウムの在所《ありか》を喋《しゃべ》らずとも、貴様の身体がハッキリ喋っているではないか。ざまァ見やがれ」
私は早速彼の左のポケットの底を探って、と
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