してあやしい人物を下から照らしあげたのである。人相《にんそう》のよくない一人の男が、ぶるぶるとふるえ、両手を合わせて、しきりに拝《おが》んでいる。拝まれているのは清君と一郎君――いや、例の二体の骸骨だった。
「盗《と》りました、盗りました。わ、私にちがいありません。……はい、何もかも申し上げます。わ、私がかくしましたので……ここへ掘りました。館内防空壕の奥でございます。その奥をもう少し穴を掘りまして、そこへかくしておいたのでございます。……いえ、みんなそっくりしております。百号ダイヤもそのままです。おかえししますから、どうぞお助けを……。尊《とうと》い仏像から抜いた、もったいないダイヤを自分のものにしようと思った私は、罪ふかいやつでございます。しかしみんなおかえししますゆえ、どうぞ私を地……地獄へはやって下さるな。ああ、おすがりします。なむあみだぶ、なむあみだぶ、うへへへ……」
「いや、ゆるさぬぞ。きさまはこれから地獄へつれて行く……ここは地獄の一丁目じゃ。それを知らぬか。いひひひひ」
「やややッ、お助け……ううーン」
あやしい人影は、へたへたと草むらの中にくずれるように倒れ、気を失
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