のさ」
「骸骨をこしらえて、それをぶら下げて動かすのかい」
「そうじゃないんだよ、僕たちのからだを骸骨にこしらえるんだ。それにはね、まずはじめに白粉《おしろい》で骸骨の骨の白いところをかいてしまうんだ。上は顔から、下は足までね。それから残ったところを鍋墨《なべずみ》か煤《すす》かでもって、まっくろに塗っちまうのさ。そうすると僕たちが骸骨に見えるじゃないか、前から見ればね」
「はだかになって、その上に白粉や鍋墨を塗るんだね」
「そうさ。そうしてね。あそこを舞台にして、その前でおどるのさ。舞台のうしろの壁は、まっくろにペンキが塗ってあるからね、あの前でおどれば、僕たちのからだの鍋墨のついている部分は黒い壁といっしょにとけあって、見分けがつかなくなる。だから白粉をぬってある骸骨のところだけが見えるから、いよいよ本物の骸骨に見えるんだよ。それは、すごいよ。はじめは骸骨はじっと立っていて動かないのさ。胆だめしの当番が鉦《かね》をたたいたら、それをきっかけに、骸骨は急に動きだすんだよ。すると当番はびっくりするよ。うわあと泣きだしたり、縄をひっぱることも、壁に名前を書くことも忘れて、一目散に逃げだすかもしれないよ。おもしろいよ」
「うん、それはおもしろそうだ。僕は骸骨になろうっと」
「僕も骸骨になるよ。骸骨は二人出すことにしよう」
「いやン、僕も骸骨にしてよ」
 そばでさっきから聞き耳をたてていたブウちゃんがわりこんでいった。
「僕も、僕も……」
「いや、僕も骸骨だ」
 良ちゃんも鉄ちゃんも骸骨|志願《しがん》だ。
「骸骨が五人もいちゃ多すぎるね。じゃあこうしよう。この五人が代《かわ》りあって骸骨になって舞台へ出ればいいや。そのほかに、まだすることがあるんだ。たとえば骸骨を見せるために懐中電灯《かいちゅうでんとう》をつけて照らす照明係《しょうめいがかり》が右と左と二人必要なんだ。それから、シロホンをひっかいてかりかりかりと音を出す擬音《ぎおん》係もいるんだ。この音は骸骨の骨が鳴る音をきかせるんだ。これでちょうど人員は五人いるんだよ」
 こうして胆だめしの遊びがはじまることになった。その廃工場を骸骨館《がいこつかん》と名づけ、胆だめしの当番はへい外から入ってひとりでその骸骨館へ入り、地獄の一丁目を探検して来なければならないことにきまった。


   探検《たんけん》はじまる


 
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