《と》いてお話することが出来ないのです。こういう方面にすこぶる明るい私の友人を御紹介しましょう。アーガス博士といいますが、クリムスビーに住んで鑑識研究所を開いています。そこへいらっしゃるがいいでしょう。このズボンについている泥だとか、ハンカチーフについている血や油などについて、彼はきっと、あなたをびっくりさせるに充分《じゅうぶん》な鑑定《かんてい》をなすことでしょう」
「あ、そうですか。それは、実にありがたい。アーガス博士でしたね」
「そうです。博士は、ひところ、警視庁でも活躍していた人ですが、今は、自分の研究所に立て籠《こも》っています」
「クリムスビーですか。どこでしょうか、その、クリムスビーというのは」
「クリムスビーというと、北海《ほっかい》へ注《そそ》ぐハンバー河口《かこう》を入って、すぐ南側にある小さい町です。河口は、なかなかいい港になっています」
「はあ。北海に面した良港の中にあるのですね。じゃあ、私はすぐ、そのクリムスビーへいって、アーガス博士にお願いしてみましょう」
「いま、紹介状を書いてさし上げます、ミスター・F!」
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午後遅くクリムスビーの
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