らないといった面持《おももち》だ。
「敵といえば、わかっているよ。例の緑色の怪物だ。いや、ここでは緑色の衣裳《いしょう》をぬいでいるかもしれないが……。しかし、少くともわれわれのいるここへ来るときは、例の服装でいるだろう」
「ああ、あいつですか。鉱山の底で死んだふりをしていた。青いとかげの化物みたいな奴……。大きな目が二つあって、頭に角が三本生えている、あのいやらしい怪物のことですか」
「帆村班員はほんとうにそう思っているのか。いったいそれはどういうわけで……」
と、山岸中尉も、思わず声を大きくして帆村の方へすり寄った。
「これは別にたいした予言でもありませんよ。なぜといって……」
と、帆村は途中で言葉をとめてしまった。
「帆村さん。早く話をしてください」
「話をするよりも、実物を見た方が早いよ。それっ、窓から外を見たまえ。例の緑色の怪物どもがおしかけて来たよ。ふふふ、これは面白い」
「えっ」
山岸少年が窓の方へ目を走らせると、たしかに帆村のいったとおりだ。向こうからこっちへ、緑色の怪物が十四五名、肩を組んだようにしてぞろぞろと歩いてくる。そしてその先頭に立って歩いている一名が、
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