手をあげて何か叫んでいる様子だ。それは山岸たちに向かって呼びかけているように思われる。
「総員戦闘準備……」
 山岸中尉は、いよいよ来るものが来たと思って、戦うつもりだ。
「待った。機長、はじめから戦うつもりでいたんでは、こっちの不利となりますよ。しばらく成行《なりゆき》にまかせてみようじゃないですか」
「いや、捕虜《ほりょ》になるのは困る」
「捕虜ということはないですよ。あの緑人どもは、われわれ地球人類と話をしたがっているのだと思います。だから、私たちを大事にするに違いありません」
「どうかなあ」
「まあ、こんどだけは私のいうところに従ってください。そしてここをさよならするまでは、短気を出さないように頼みますよ」
「帆村班員は、よくそんなに落着いていられるなあ」
「なあに、私は大いに喜んでいるのです。緑色の怪物どもから、われわれのまだ知らない、宇宙の秘密をしゃべらせてみせますよ。とうぶん彼等を憎まず、そして恐れず、しばらくつきあってみましょう。その結果、許すべからざる無礼者だとわかったら、そのときは山岸中尉に腕をふるってもらいましょう」
「竜造寺兵曹長の、安否をはやく知りたいものだ」
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