発を応用した穴ほり道具を、なるべく使わないようにしながら進んだ。こうして進むうちにも、不安定な状態にある坑道は、いつ新しい落磐をおこすかもしれないので、そのときは強力な穴掘り道具を使う方針であった。
 およそ四時間もかかって、ようよう三人は第八十八鉱区の入口にたどりついた。
 たいへんうれしかった。
 しかしこれから先が問題である。働きなれたなつかしい鉱区の中は、いったいどんなになっているのであろうか。
 三人は、そこで持ってきた握飯《にぎりめし》をたべ、水筒から水をのんで元気をつけた。
 それからいよいよ中へ入っていったのである。
 ところが坑内は、意外にもきちんとしていた。もっともここはそうとう深いところでもあるし、地質もしっかりしているので、きちんとしていることがむしろあたりまえだった。だが地上のあのすごい光景にびっくりさせられた三人は、第八十八鉱区のこの無事なありさまが意外に感ぜられた。
 が、三人が、この鉱区の中央をつらぬく竪坑《たてこう》のところへ、横合から出たときには、思わずあっとさけんだ。
 いつもこの竪坑は暗かった。今は電灯もついておらず、さぞまっくらであろうと思って
前へ 次へ
全162ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング