のケーブル吊下《つりさ》げ式の運搬器《うんぱんき》も、その鉄塔も、爆風のため吹きとんでしまい、今は切れ切れになった鋼索《こうさく》が、赤い土のあいだから、枯草のように顔を出しているだけであった。
 それよりも、すごい光景は、この鉱山の上に爆弾が集中されたため、山の形がすっかりかわってしまって、地獄谷のようなありさまになっていることだ。その間から、ほりかえされた坑道が、あっちにもこっちにも、ぽかんと口をあけ、あるところは噴火口のように見えていた。
 金田と、川上、山岸の三人は、この日このように破壊された坑道のどこからか地中にはいりこみ、この間まで働いていた第八十八鉱区が今どんなになっているか、それをよく見てしらべてくるのが仕事だった。それはかなり危険な仕事であったが、戦争の最中のことで、鉱区はできるだけ早くもとのようになおして、鉱石をほりだすようにしなければならないので、三人はえらばれて、この山へやってきたのである。それは敵機の大爆撃があってから、七日めのことだった。
 山へついた三人は、いつもはいりなれた坑道の入口がわからないので、まごついた。やむなくそれから山の頂上へのぼって、上から
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