しぎなことに歯が一本もなかった。
まったく、ふしぎな死骸であった。
この死骸の身長は、はかってみると、一メートル八〇あった。ふつうの日本人より、よほど背が高いわけだ。
この死骸のふしぎなことについては、まだまだのべることがあるが、それはだんだん後で書いていくことにするが、以上のべたところだけによっても、この死骸がじつに奇妙なものであることがおわかりになったであろう。
では、この奇妙な死骸が、どうしてこんな地底ふかいところで発見されたか、そのころの話をこれからすこし書かねばならない。
三人の鉱員
この奇妙な死骸の発見者は、金田《かねだ》という鉱員と、川上《かわかみ》と山岸《やまぎし》という二人の少年鉱員であった。
この三人は、梅雨《つゆ》ばれの空をあおぎながら、早朝この山へのぼってきた。
この山は、この間までりっぱな坑道をもった鉱山であったが、とつぜん五百機に近い敵機の大編隊によって集中爆撃をうけ、そのためにこの鉱山はめちゃめちゃになった。
坑道の入口はたたきつぶされ、変電所も動力室も事務所も、あとかたなく粉砕されてしまった。坑道を通って外へ鉱石をはこび出すため
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