プロペラで飛ぶ飛行機や、噴射で飛ぶロケット機などでは、とてもスピードが遅すぎて、役に立たないぞ。まず飛行機から改良してかからにゃ駄目だ。十八歳の少年兵のとき、飛行機に乗って火星まで行って、そこで引返して地球へ戻ってきたら、八十八歳のおじいさんになっていたでは困るからなあ」
「十八歳の少年が帰って来たら、八十八歳の老人に……。はっはっはっはっ。それは困るですなあ。ぜひもっと速い飛行機を作ってもらいましょう。はっはっはっはっ」
 中尉と兵曹長は、帆村をそっちのけにして、来るべき宇宙戦争の想定ばなしに、腹をかかえて笑いあった。
 しかしこれが決して笑いごとではないことは、すでに両人とも、肚《はら》の中に十分に承知していた。

   深夜の電話

 ちょっと聞くと、非常に突飛《とっぴ》に思われる帆村の宇宙戦争の警告が、山岸中尉と竜造寺兵曹長の共鳴するところとなったのは帆村にとって、たしかに気持のいいことだった。
 それに児玉法学士も、あれ以来すっかり帆村と仲よしになり、調査隊の捜査のひまを見ては、鉱山の研究室へ帆村を訪ねることが多くなった。児玉は調査隊の七人組の助手の一人であるが、その中ではい
前へ 次へ
全162ページ中52ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
海野 十三 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング