うなると、われわれ飛行科の者は、平常から宇宙戦争の尖兵《せんぺい》たる覚悟で、勤務せなきゃならんですな。これは大変だ」
 兵曹長は、いが栗頭を、太い指でぽりぽりとかいた。
「兵曹長のいう通りだ。今の話でいくと、これからの防空第一線は、成層圏、いや成層圏よりも、もっと上空のあたりになるぞ。幕状オーロラ(極光)が出ているところは、地上三百キロメートルの高空だが、あの極光を背景として、他の遊星生物の空襲部隊と、壮烈なる一大空戦を展開するなどということになるかもしれないね」
「これは困った。われわれは、高度三百キロメートルどころか、その十分の一にも足《た》りない高度の成層圏飛行で、今しきりに冷汗をかいているのですからなあ。急いで勉強して、一日も早く極光圏を征服しなければなりません」
「そうだとも。それから更に進んで、月世界や火星までも飛行ができるようになっていなければ、間に合わんぞ」
「やれやれ、話が手荒く大きなことになりましたな」
「そうだよ。宇宙の敵からわれわれを守るためには、すくなくとも月世界や、火星、土星などという遊星を、わが前進基地として確保しておかねばならぬ。さあ、そうなると、今の
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