たのは、正午のすこし前であった。その日彼は早朝から研究室にこもったきりであって、お昼の食事のために外に出たとき、始めてこの奇怪な話を耳にしたのであった。
帆村はこの話を聞くと、さっと顔色をかえた。それから彼は若月次長を探し出すと、彼を引張《ひっぱ》って行くようにして、室戸博士の一行を訪ねたのであった。
「白根村で村道を歩いていた十二三人の者が、急に歩けなくなった話をお聞きになりましたか」と、帆村は室戸博士をはじめ、七人組の顔をずらりと見まわしていった。
「ああ聞いたよ。どうもおかしいね」
室戸博士は、落ちついて答えた。
「そうですか。重大な事件だと思いますが、あなたがたはあれをどうお考えになりますか」
帆村は熱心な口調でたずねた。室戸博士はしずかに首を左右に振って、
「まったく気の毒だと思う。この村は、例の青い怪物の出現以来かなりおびえているらしいね。神経衰弱症だねえ」
博士はしずかにいった。帆村はそれを聞いて、不満の色をうかべた。
「室戸博士は、そうお考えですか。それはちとお考えすぎではないでしょうか。十二人の歩行者が、揃いも揃って神経衰弱になるとは思われませんが……」
「ほ
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